医療の知識によってやりがいを感じた瞬間
私の主人は消防学校を卒業後、消防職員として勤務して20年になる。学生の頃、東京消防庁のドキュメンタリー映像を見て、人命救助の尊さに心打たれ、医療行為はできないが一刻も早い処置ができるよう迅速な対応をしている姿に感銘を受けて、自分もそういった仕事に携わりたいと思ったそうだ。東京消防庁の職員は、自分の仕事にやりがいと誇りもって生き生きと働いており、そんな姿に自分の未来を重ねてますます意欲的になった。消防学校に入学後、初めて医療の知識を実践したのが、人形を使った心臓マッサージと人工呼吸だった。そのときは、人形だったが、いつかは人の命を救うために必要とされると信じて、教官の言葉を聞き逃さないよう真面目に取り組んだ。練習では上手くできたが、実際そういう現場に遭遇したとき、冷静に対処できるか不安だった。そして、消防署に配属されて1年目の新人のころ、そのときがやってきた。男性が風呂場で突然倒れて、心肺停止になっていると連絡が入った。すぐ現場にかけつけ、消防学校での教官の言葉を思い出しながら、無我夢中で心臓マッサージを行った。胸の真ん中に手の付け根を置き両手を重ねて、肘をまっすぐ伸ばし、1分間に100回以上の速さで継続できる範囲で強く圧迫を繰り返す。心肺蘇生法という医療の知識が役立った瞬間だった。後日、男性が一命を取り留めたということを聞いて、初めて自分の仕事にやりがいを感じた。彼が新人の職員にもよく話すエピソードだ。様々な知識は必要だが、それを冷静に対処できるよう日々の訓練が大切だと語っている。最初は憧れに似た気持ちで目指した職業だったが、今では誰よりもやりがいを感じ胸をはって誇りに思える自分がいる。